[ 年が変わること ] |
それは、何も変化しないのに。 テレビがぎゃあぎゃあと、年が変わるを告げてるからわかるだけで。 時間なんか目に見えないし。色と関わらないし。体も変化ないし。 でもね、なんかがかわってるんだ。そぅいったこと。きっと、おんなじこと。 除夜の鐘が響いて、行く年来る年がしめやかに、日付が変わったことを告げた。 叔父さんが穏やかに笑ってる。 絹代ちゃんが、オコタの布団の上で温まっている。 もう一回叔父さんを見ると、その目線はこっちを向いていて。 たぶんお互いに言いたいことは一緒で。 ふっと、笑ってから、深々とお辞儀をした。 もちろん、俺も、深々とお辞儀をして。 「あけましておめでとうございます」 「あけましておめでとうございます」 他人行儀にすら聞こえるその挨拶。けれど、特別な言葉。 なんとなくその挨拶だけで、気持ちがすっきりして、違う自分になった気がしてしまう。 そんなことは全然無いのに、脈絡と昨日から明日になっただけなのに。 それでも、今日って日付は特別なんだ。きっと。 もしかしたら、大晦日から新年にかけて何かが住んでるのかもしれない。 そいつが、俺たちを気づかない間に食べてしまって、 一度生まれ変わっているから、こんなに正月がすがすがしいのかもしれない。 そんなことはないだろうけれど、ぜったい。 「今年もよろしくお願いします」 「今年もよろしくお願いします」 叔父さんが笑って、俺も笑った。年が代わるって言うのはそういうこと。 それだけだけど、正月って言うのはそれだけで幸せなこと。 クリスマスは華やかだけれど、正月は地味だから、 けれど、あったかくしていられるから。 うちにも電話して、あけましてオメデトウくらい言おうかなぁ。 そんな気がしてくる。 うつらうつらしていたらしい絹代ちゃんが、あら、年明けちゃったのね、とあくびをした。 ばたばたと廊下から物音が近づいてくる。きっと、おじいちゃん達だ。 除夜の鐘突きにいっていたのから戻ってきたらしい。 東子さんも年越しパーティを早々に切り上げて帰宅してくる。 叔父さんが、じゃあ、お雑煮でもあっためますかとオコタからでた。 どたどたと廊下の足音が近づいてくる。 絹代ちゃんが、いやそうに眉をしかめる。 忙しい元旦が始まる。 |
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